SS企画「一枚絵で書いてみm@ster」参加作品です。
お題の一枚絵はこちら
それでは本編は続きからどうぞ。
「あれ?千早、携帯変えた?」
珍しく千早がソファーに座ったまま、携帯電話をじっと眺めてた。
機械オンチな千早には似合わない、最新の携帯電話だった。
「ええ。前のが壊れてしまったから、思い切って。…ところで、真?」
千早はボクに不思議そうに質問する。
千早の隣には、そこそこ厚めの携帯電話の説明書があるのに、殆ど開かれた形跡はない。どうして、機械オンチの人って自分が機械に弱いのを分かってるのに説明書を読まないんだろ?なんて思いながら、千早も多分、操作方法が分からないんだろうなと、そう感じて目を合わせた。
「この…画面を動き回ってる羊なのだけど…これは一体何なのかしら?」
千早の携帯電話には、確かに羊のキャラクターがヒョコヒョコ動いてた。
これは携帯電話会社のサービスで、GPS機能やスケジューラなんかと連動して、この羊が例えば道路の混雑状況とか、色々教えてくれるんだって。…まあ、ボクもこの間律子に教えてもらったんだけどね。
「そう…」
ボクの説明を聞いても、なんだか千早はすっきりしない顔だ。又聞きの説明だから、わかり辛かったかな?
「ねぇ、真?どうしてこの羊はタキシードを着ているの?」
…え?気にしてるの、そこ?
「それに、何で羊なのかしら?別に、ウサギでも、犬でも、かわいい動物なら他に沢山あるのに」
…どうやら、本気でそこが気になっているみたいだね…。もう、かれこれ20分くらいは携帯の画面見つめてるぞ…。まったく、集中すると梃子でも動かないんだから。こんなことでも。
「それはね、千早?“執事”なんだ。執事みたいにお世話しますよ、って意味で」
「そう…執事。羊が執事なんて、おかしいわね」
「そうだね。“執事の羊”なんてダジャレ、おかしいよね」
なんて言ってたら、急に千早がまた下を向いて考え出しちゃった。
「…どうして“しつじのひつじ”がダジャレなのかしら?」
「は?」
「しつじ…ひつじ…」
「ちょ…ちょっと待ってよ、千早?それ、本気で言ってる?」
千早はずっと下を向いたまま、“しつじ”“ひつじ”と呪文みたいにして呟いてる。…どうやら本気みたい。
千早って、こう生真面目って言うか、洒落が通じないって言うか…そういう部分は前から感じてたけど、これほどとは…。そういえば、この間お笑い番組に審査員で出たとき「それのどこが面白いのですか?」って芸人さんに真顔で聞いてたっけ…。なんだか一部の芸人さんには「ボケクラッシャー」って呼ばれてるみたい…。
あの時は単に笑いのツボが人よりズレてるだけだって思ってたけど、これはそんな生半可なレベルじゃなさそうだぞ…。
「ち、千早?今日はこの話題はこのくらいにして、いつものトコ、行こうか?」
このままだと千早は今日この先ずっとしかめっ面で考え事をしてそうだから、ボクは、そう切り出した。
■■■
ボク達が言うところの「いつものトコ」っていうのは、事務所近くの甘味処。ここのクリームあんみつは、事務所みんなから大人気だった。
それに、ご主人が良い人で、ボク達が来ると決まって、奥の座敷に案内してくれるんだ。「有名になるとゆっくり甘いものも食べられないだろう?」ってさ。
「うーん、相変わらず美味しいね。ね?千早もそう思うでしょ?」
「そうね、真」
ようやく千早に笑顔が戻ってきた。やっぱり女の子は甘いものだよね。うんうん。
「あ!」
「どうしたの?千早?」
急に閃いた表情をしたかと思えば、千早は笑い始めた
「ぷ…ククッ…アハハハ…そう、“しつじのひつじ”…短い文章でもちゃんと韻を踏んでる…。つまりはダジャレなのね…」
え?ええ?い、今更それに気付いたの?ダジャレだって、ボク、さっき言ったじゃないか!
何がそんなに千早のツボに嵌ったのか分からないけど、千早のタイミング外れの笑い声は、お店中に響いた。
「ちょ、ちょっと千早?そんな大きな声、迷惑だよ…」
「フフフ…だって…ウフフフ…アハハハハ…」
ああ、なんだかこっちを見る店員さんの目が厳しくなってきたぞ…。
まずい、これはまずい…。いや、あんみつは美味しんだけど…じゃなくって…こんなダジャレ一つで出入り禁止なんてことになったら、後でみんなになんて言われるか…。そうだ!
「千早!それじゃ、これはどう?これもダジャレだよ?」
「フフフ…え?何?」
『アルミ缶の上にあるミカン』
「?」
ボクの一言に、千早はピタっと動きを止めた。
「…どうしてそれがダジャレなのかしら…?」
やっぱり、考え込んじゃった。もしかすると千早ってこんな風にダジャレとか、お笑いについて話せる人が少なかったのかな…?
そんなふうに考えると、ちょっと可哀想な気もするけど…今はそれに感謝しなきゃ。
「アルミ缶の上に…ミカン…一体どうしたらそんなことに…」
「千早…とりあえず今日は帰ろうか?」
さっきまで大声で笑ってたのに、急に考え込んだ千早を不思議そうに見つめる店員さんを気にしつつ、ボクたちは店を後にした。
■■■
「ただいま?」
ようやく家について、自室のドアを開けた瞬間、ボクはベッドに飛び込んだ。なんだかもう、今日は疲れたよ。
こんな日はもう、寝るに限るよ。晩御飯まで…寝て…
?♪あおいーとりーもししあわせーちかくーにーあってもー♪?
まどろみに身を任せようとした瞬間、携帯電話に着信を知らせるメロディが流れた。誰からかの電話か、それは見なくても分かってる。
「もしもし?千早?」
『真?すごい!すごいわ!大発見よ!“アルミ缶の上にあるミカン”こんな短い文章なのに、ちゃんと“あるみかん”が2つも入ってるの!」
「うん、そうだね…」
まるで世紀の大発見でもしたかの様にハツラツと語る千早に“そんなの、昔からある古典的なダジャレじゃないか”なんて言う無神経さはボクには無かった。
『すごいわ。ダジャレって今まで、今ひとつ理解が出来てなかったのだけど、こんなに奥が深いものなのね。フフフ』
「そうだね。お陰で笑ったり、考えたりして、忙しかったでしょ?」
『そう言えば…そうね。でも、お陰で楽しかったわ…ありがとう、真。フフッ』
ううん、お礼を良いたいのはボクの方。だって、今日は千早の意外な面が見れたし、何より…こんなに千早がたくさん笑ってる日って、初めてだったから…なんだか得しちゃったかもね。へへっ、やーりぃ!
■■■
「おっはようございまーす!」
翌日、事務所に行くと、プロデューサーが何だか困り顔で立っていた。
「どうかしたんですか?プロデューサー?」
「ああ、真…。千早のことなんだが…」
「…?千早なら、そこにいるじゃないですか…って、ええ?」
「音無さん、聞いてください!今朝起きたら布団が”ふっと”んでたんです!…なんちゃって」
「え…えぇ…それは大変ね…千早ちゃん…」
「我那覇さん、聞いて?今日、近所の猫が、“ねこ”ろんでたの!…なんちゃって」
「そ、それは可愛いな、千早…」
…ねぇ?何だか今日、いつもより寒くないかな?暖房、故障中だっけ?
「朝から千早がこんな調子なんだが…真、何か知ってるか?」
「え…あ、いや…その…アハハハ」
この状況って、もしかして…ボクのせい?
参ったなあ…そう言えば千早って凝り性だったっけ…。
「まあ、でもあんなに自然な笑顔がたくさん見える千早も珍しいよな。真もそう、思うだろ?」
「え、は、はい!そうですね、プロデューサー!」
「いっそこのまま“サムカワ系”アイドルとして売り出すのも良いかもな…」
「え?ええー?」
ちょ、ちょっと!プロデューサーまで何、言っちゃってるの?そりゃ、ボクも千早の可愛い笑顔がたくさん見られた方が嬉しいけど…って、そういう問題じゃなーい!
「あ、真?ねぇ、聞いて?」
あ…こっちに気付いた千早が、まるで新しいおもちゃを見つけた子犬の様に走って来るぞ?
「あれから、私なりにダジャレを調べてみたの。すごいわ。ものすごくたくさんのダジャレがこれまでに生み出されていたのね。知らなかった」
「そ、そう…」
「それで、私も一つ、考えてみたの!ねえ、真?これ、着けてみて!」
「え…これって、赤ちゃんセットじゃないか。そんなのどうして…いや、無理やり着けるのやめて!」
「ウフフ…真の“おままごと”…なんちゃって」
「いやいやいやいや…!」
?♪ピロリーン?
「写メを撮るなー!」
「素晴らしいわ。是非、春香や律子にも見てもらわないと…」
ちょ、ちょっと待ってよ!春香はともかく、律子にこんな写真送ってもし、あのギネス級のアクセス数のブログにでも載せられたら…うわーん!
「これじゃ、ボクのイメージにダメージだよぉー!」
「うーん、ちょっと苦しいわね。50点」
「これはダジャレじゃなーい!!」
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その手があったのかー!
初めまして、エイジです。「一枚絵?」に参加しています。まだ上げてませんがw
上記、その手があったのかー!とは、…2作品以上のSS上げても良かったんですね。知らなかったです。
失敗しました。それがオーケーなら、同じ絵柄からさまざまなシチュのSSを大量に上げる、とかやった方が私も面白かったし、読者受けも良かったなぁ、と。
次回があるなら、このアイディアで行きましょ。目指せ毎日更新!みたいな?
それと、ダジャレ理解できない千早萌え。15にして、トップアイドル(?)にしてダジャレにはまる千早萌え。素晴らしい。ハラショー。マーベラス。
それではまたいずれ。
コメントどうもです。
いや、注意書きに何も書いてなかったし、書いても良さそうな雰囲気だったので書いてみました。折角だから色々描きたいし見たいなーって感じで。
千早はダジャレと言うか、お笑い全般にズレてる気がするんですよね。お笑い芸人には絶対絡み辛いと認識されてるんじゃないかなーと。
それでは、私もエイジさんの作品、楽しみにしてますね。
ツイッターでもちょっとお話しましたが、この千早を
みてると 某ライダーのフィ○ップなイメージがついて
しまいましたww 千早ってとにかく頭がよさそうで
実はかなり知らない事が多いから何かに没頭したら
この位の反応みせるんでしょうねぇ^^
こういうボケたところがまた千早の魅力なんでしょうけど
どうもです。
「さあ、(ダジャレの)検索をはじめよう」ですね。わかりますw
千早って歌に没頭するとかなり周りが見えなくなるようなので、少し世界観が広がって色々なものに興味が出てくるとこんな風になるのかも、なんて感じで書いてみました…建前上は。
本音を言うと、この2人でギャグ書くなら絶対ボケは千早だろうと思った訳ですが。
このSSを読んで、トリビアで学者たちが決めた
学術上面白いギャグを決める回のことを思い出しました。
千早って、界王様とは違うダジャレセンスを持っているんだと、
これを読んで確信しました。
>月の輪P
コメントどうもです。
千早のギャグセンスは絶対にズレてると思いますね。目の付けどころがちがうと言うか。
沸点の低すぎる千早は可愛いなあw
千早や律子といった真面目キャラが、変なところで
一転して可愛くなるのは、ある意味武器だよなーと思います。
“まことのおままごと”
……リアルでちょっと吹きましたwくやしいw
>寓話さん
コメントどうもです。
そうですね。私は千早も律子も好きですけど、やっぱり魅力はそう言った所にあると思います。
このSS書くに当たって、どうしても「真」をお題にダジャレを考えなきゃなかったので、それが結構苦戦した所でした。
拝読させて頂きました。まことのおままごと…ごくり!!
千早さんってダジャレ大好きですよね。ああいう音遊びが好きなのか、それともボケ殺しなのか、笑いのツボが変なのか、何はともあれそんな千早さんはかわいいですね。
そんな千早さんに振り回される真さんもまたかわいくて、いやぁニマニマさせて頂きました。こういうかわいい話いいですねぇ。
素晴らしいSSをありがとうございました!
>小六さん
きっと素の千早って可愛いと思うんですよね。天然だから。
真は振り回され役が似あうと思うんですよね。ある意味総受けと言うか…。
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