kaite-2
SS企画「一枚絵で書いてみm@ster」参加作品です。
お題となった一枚絵はこちら





 一昨日、東京では珍しく大雪が降りましたね。
 皆さん、きっと寒かったことでしょう。雪なんて、嫌いになっちゃったかも知れませんね。
 でもね、そんな寒い雪の日でも…生まれるものがあるんですよ?

 そんな雪の日に、私は生まれました。
 コンニチハ。私、雪だるまです。
 え?何で雪だるまが話してるんだって?大丈夫です。あなたにしか聴こえませんから。なんですか?細かいこと気にしすぎると、ハゲますよ?

 それにしても、粋な駅員さんもいたものですね。
 駅前の雪なんて、普通水でもかけられて溶かされちゃうのに、こうやって雪を集めて私を作ってくれました。
 まあ、昨日なんて邪魔だって酔っぱらいに蹴飛ばされましたけど、それはそれ。こういった都会の真ん中で過ごすのも結構オツなものです。

 というのも、あのオーロラビジョンって言うんですか?あの、ビルに付いてるでっかいテレビ。
 あれ、丁度私のいる位置から、よく見えるんですよ。お陰で退屈しません。

 ちょっとね、お気に入りの人がいるんです。
 よく、オーロラビジョンに出てくるアイドルの人なんですけどね、春香ちゃんと、伊織ちゃんっていうんです。
 いっつも元気で、輝いてて、踊ったり、歌ったり…私に無いものを…全部持ってるんですよね…羨ましいなあ…。
 けれど…私は雪だるまですから、文字通り、手も足もでません。
 せめて…足が有ったら、あんなふうに踊れたのかなぁ…?
 せめて…ちゃんと動く口が有ったら、あんな風に歌えたのかなぁ…?
 いえいえ、そんなことを考えてはいけませんね。
 私は雪だるま。
 きっとその内に溶けてなくなってしまうのですから。
 こんな風にアイドルに憧れるなんて…馬鹿げて…ますよね…。

■■■

 一夜明けて、今日はまた、雪がふりました。
 あなたは寒い思いをしてイヤでしょうけど、私にとっては寿命の伸びる思いです。
 でも、こんな雪の強い日は駅向こうのオーロラビジョンもよく見えませんね。痛し痒しです。

 ?まったく!何でこんな雪の日にロケなのかしら!?

 でも、今日は周りが雪のお陰で静かなせいか、音はよく聴こえますね。今日も伊織ちゃんの声が聴けて幸せです。
 でも、今日は本当に近くにいるみたいな、不思議な感じ…

「まあまあ、伊織。あ、あっちに雪だるまがあるよ?可愛いね!」
 
 え?ええええ?
 これは私が見てる夢なんでしょうか?
 ちょっとほっぺをつねって…と言っても私には手もほっぺも無いですね…って、そんなこと言ってる場合じゃないですよ!
 いま、私の目の前に、春香ちゃんと、伊織ちゃんが!
 春香ちゃんが、私のこと、「可愛い」って!!言ってくれましたよ!!ねえ?

「こんな溶けかけの雪だるま、何が可愛いワケ?」
「えー、私は可愛いと思うんだけどなあ?」
「まったく、ちょっと待ってなさいよ…よし、これで少しはマシになったかしら?」
「伊織…これ、お姫様ティアラじゃない?」
「そうよ。私達と並ぶなら、これくらい飾らないと」
「ウフフ…可愛い。それじゃ、今日からこの子も、アイドルだね!」
「まあ、冬限定でこんなユニットパートナーも良いかもね。にひひ」

 ねえ、聞いてくれましたか?
 私のこと「アイドル」だって!
 春香ちゃんと、伊織ちゃんが、私のこと「アイドル」だって!
 こんな、踊ったりも歌ったりも出来ない私が…。
 あぁ…うれしいなあ…。
 こんなに嬉しいこと、ありません。
 それに…春香ちゃんも伊織ちゃんも、私が想ってた通り、素敵な女の子だなぁ。
 元気で、可愛くて、心が暖かくて…溶けちゃいそう…。
 うれしいなぁ…。本当に、うれしいなぁ…。 

■■■

 夢のような一日から、また一夜明けました。
 え?私の姿が見えない?
 下です、下。もっと下を見てください。
 そう、お恥ずかしい話ですが、本当に8割方溶けてしまいました。
 いやあ、意外意外。昨日の雪からまさか、こんな初夏の様な陽気になるなんて、思いもしませんでした。
 残念ですが、もうすぐお別れのようです。
 でも、良いんです。短い間でしたけど、とっても素敵な思い出が出来ましたから。
 
 あ、勘違いしないで下さいね。別に死ぬって訳じゃないんです。
 ただ、ここよりずっとずっと遠くの空にある雪の国へ帰るだけなんです。
 いつかまた、どこかで雪だるまとして、あなたに出会えるかも知れませんね。
 そう、春香ちゃんや伊織ちゃんにもまた…いつか。

 だからね、私、さよならは言いません。「またね」でお別れしますね。

 それじゃ、次の雪の季節まで…またね。プロデューサーさん…。

 

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月の輪Pです。
街角に立つ雪だるまの視点とは新鮮でした。ラストは伊織に蹴り殺されたのでなくて安心しました。最後の「プロデューサーさん…。」という言葉が、意味深にも感じられて豊かな余韻を覚えました。

プラグインさん、どうか見逃してください。

雪ダルマに喋らせる展開、考えたんですがまとめ切れませんでした。
他の方がやり遂げているのを見ると、なるほどこうやるのか、と。
直接の会話をさせない交流劇は、とても素敵でした。
アイドルとプロデューサーさんはまたいつか会える、ってのが、
実にアイマスで良かったです。素敵。

>月の輪P
伊織視点、春香視点で1本づつ書いたので、ちょっと変化球的なものを書いて見たいと思いました。
ラストのセリフは色々な捉え方がもしかするとあるのかも知れません。自分の中では「こうだ!」というものが実はあるのですが、言わぬが花という奴でしょうかね。

>ガルシアP
なんででしょうね、今回もプラグインが悪さを…本当に申し訳ない。

ホントは春香や伊織のセリフも全く入れずに雪だるまの独白だけで成立させたかったのですが、そこまでは無理でした。
アイドルやP以外の視点で語るアイマスって結構好きなんです。ちょっと今回は変わった視点ですが。

実際雪達磨だけでなく、世の中にあるいろんな物体が
こういう風にみんなをみてたらどう感じるかって考えると
楽しいかもですねぇ

物には魂があると考えると 彼女達のファンの数は・・・
きっと計り知れないほどの数になるんだろうなあと

>トリスケリオンさん

どうもです。

春香のリボン視点とか、面白そうですね。ちなみに、律子の眼鏡になるPを書いたことはあります。

雪だるま視点が大胆なコンポジションですが、凄く自然ですね。
溶けてなくなる雪だからこそ、春香や伊織を身近に感じた時間が
一瞬でも物凄く愛しくて、それが一瞬だから切ない。
そして確かに後を引く余韻を持った構成が、「またね」のあとを
自然と予感させる引きになっているとか、実に素敵でした。

>微熱体温さん

どうもです。
実はこのお話はもう少しだけラストを長くしようかなと思っていたのですが、ちょっと蛇足かなと思って削ったりしています。なので、余韻を感じていただけると、嬉しく思います。ありがとうございます。

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